
松本翔太郎のこんな風におもった
毎週金曜日更新
公式サイト書き下ろしの短い読み物
#松本翔太郎の風
#27「続」
(2025年8月15日更新)
戦争のない国に生まれ、好きな服を着て好きなものを食べ、明日を想像しながら眠りにつく。
そんな毎日がどれほど尊いものかを、僕はときどき忘れてしまう。
忘れられる瞬間があるのは「平和」であることの証だ。
けれど、そのありがたみを完全に忘れ去ってしまうのは、やはり違う気がする。
今日は、僕が過去に経験した少し苦い出来事と、まだ飲み込めずにいる感情について書こうと思う。
#26「祭」
(2025年8月8日更新)
おばあちゃんの家は、村だった。
新幹線で終点まで行って、そこから特急に乗り換えて、
最後は一両編成の列車にゆられ、山を奥へ奥へと進んでいった場所にある。
#25「夏」
(2025年8月1日更新)
先日、出先で急に『のり』が必要になった。
コンビニ、コンビニ……
わざわざMAPで検索しなくても見つかるだろう。
そう思い歩いていると、路地にぽつんと古い文房具屋さんを見つけた。
#24「録」
(2025年7月25日更新)
隅田川の花火大会が目前に近づいている。
初めて現地に行ったときのことは忘れもしない。
東京一の花火大会とはどんなものだろうと気軽に出かけたはいいが、
#23「選」
(2025年7月18日更新)
選ばれることに敏感になりすぎる瞬間がある。
誰かに選ばれなきゃ。
その思いが、いつの間にか胸の奥に根を張った。
誰かに選ばれなきゃ。
その後に続く言葉ってなんだろう。
#22「渇」
(2025年7月11日更新)
水を飲むタイミングって、人によってけっこう違う。
のどが渇く前に飲む人。のどが渇いてから飲む人。
僕は、たいてい後者だ。
あえてそうしているわけじゃない。
#21「開」
(2025年7月4日更新)
あけっぱなし。
これは、たいてい良くない行為だ。誰もが一度は、家族や先生から注意されたことがあるだろう。
「ドアは閉めなさい」「冷気が逃げる」「虫が入ってくるよ」などなど。
理屈はたしかにその通りなのだが、
#20「甘」
(2025年6月27日更新)
僕は、おそらく生来の甘党だと思う。
なるべく普段はそういうものを控えるようにしている。
スイーツや菓子パン類は商品棚の前で見て満足するだけ。買うならせいぜいフルーツ。
体のためにもその方がいい。
それでも先日、体がなのか頭がなのか、甘いものをどうしても欲する夜があった。
#19「壊」
(2025年6月20日更新)
自転車が壊れた。
正確には『タイヤの空気が抜けたまま放置されている』状態で、
駐輪場に申し訳なさそうに佇んでいる。
#18「灯」
(2025年6月13日更新)
ロウソクの火を消すとき、ちょっとだけ躊躇する。
何もしなければまだ灯り続ける明かりをふっと消してしまうのが、
なんだか申し訳ない気がしてしまうのだ。
#17「犬」
(2025年6月6日更新)
誰かが椅子を引く音がすると、ちょっと胸がざわつく。
立ち上がる気配、その場から誰かが離れていこうとする前触れ。
#16「紙」
(2025年5月30日更新)
紙とにらめっこしている。
先日自分がやっている番組で、『ノートにアイディアを毎日書くことで創造性が伸びる』
という内容を取り扱ってから、意識して実践している。
おそらく、頭に思い浮かぶことを手書きで記していくことに意味があるものと思われる。
#15「瞬」
(2025年5月23日更新)
深夜のスーパーは、冷えていた。
まばらな人影には多すぎるほどたくさんの商品が並び、照明は白く床を照らし、
普段の賑わいとは違う、どこか仮の世界にいるようだった。
お客として失格かもしれないが、
#14「袖」
(2025年5月16日更新)
日差しの感じが、もう夏に向かっている。
信号待ちをしているあいだ、感じる肌のあたたかさに、
ちょっと前までは『あったかいなぁ』なんて目を細めていたのに、
今じゃ『早く青になってくれ』と思っている。
とはいえ、
#13「白」
(2025年5月9日更新)
予定のない日というのは贅沢なものだ。
『あれをする』、『これをする』。正確には、『あれをしないと』、『これをしないと』。
日々そんな感じなので、ワクワクするような予定がある日というのは、そう多くない。
何も予定がないならそれだけでプラス。そんな風にすら思える。
#12「橙」
(2025年5月2日更新)
エスカレーターに100回乗ったとしたら、そのうち1回くらい、なんとなく思い出す。
ここでは本当は、誰も歩いちゃいけないらしい。
二列に並んで、立ち止まって運ばれていくのがルールだって。
だけど、ほとんどの人は右側を歩いたり、左側に立ったりしている。
今日の僕は100回に1回の日だったのだが、
#11「箱」
(2025年4月25日更新)
部屋のすみっこにダンボールがひとつ。
建物の構造の影響でできたちょっと窪んだスペースにぴたりと収まっている。
邪魔になるわけでもないしとりあえずこの場所に、と置いて、もうひと月は経つ。
中身は、手元に残しておこうと思った本や、
#10「辛」
(2025年4月18日更新)
辛いものはお好きだろうか。僕は好きではない。
食べられないことはないのだが、食事に刺激を求めていないため、優しい味付けのものを好む。
カレーライスも甘口でいいし、これは変人に片足を突っ込んでると思うが、
サラダに何もかけなくたって大丈夫。
そんな味覚に、このところ変化が起きている。
自分でも不思議なくらい、口が
#9「緑」
(2025年4月11日更新)
テントを買った。
手頃なサイズ感で、すぐに設置できるものを。
実は『マイテント』を持つのが長年のひそかな夢だった。
心躍る気分である。
先日近くの大きな公園を通った時に、
#8「縁」
(2025年4月4日更新)
先代の掛け時計が寿命を迎えてから、部屋に時計がない生活が続いている。
気に入ったものを見つけたら設置するつもりなのだが、なかなか出会えない。
今どき時間を確認するだけならスマホで十分と考えていたが、
#7「月」
(2025年3月28日更新)
おなじ映画が好き
おなじ食べものが嫌い
ちょっと距離が縮まる
服がおなじだった
それはちょっとはずいけど
#6「泉」
(2025年3月21日更新)
かつて参加したワークショップ。稽古場が公共施設だった。
体育館などで見かける『ウォータークーラー』と呼ばれる水飲み場があり、休憩の際に使ったところ、
その場にいた参加者の一人に「え? それ飲むんですか?」と笑われた。
たったいま口にした水のように冷たい笑いだった。
#5「砂」
(2025年3月14日更新)
潮風を感じるカフェに来てみた。
その店には飲み物だけでなくトーストなどの軽食もあり、小腹が空いた今の気分にぴったりだ。
お店に入る直前、テラス席が目についた。
丸いテーブルに、カラフルな椅子。店内は混み合っていたが、
#4「木」
(2025年3月7日更新)
会員登録フォームに生年月日の入力欄があり、タップするとカレンダーが表示された。
このタイプは初めてだ。
現在の月の横に表示された矢印を押すと、
#3「春」
(2025年2月28日更新)
逃げる月、二月。僕も逃げたい。
何を隠そう、実は春に苦手意識を持っているのである。
春になるとやたらと明るいキャンペーンが増える。
いつかの春、僕は大船にいた。
#2「夢」
(2025年2月21日更新)
子供の想像力はすごいとよく言う。
大人の想像力には限界があるというニュアンスを感じる。
自分にはこんなの思いつかない、と。
子供の想像力は確かに豊かだ。
僕の記憶の一番奥にある子供時代の将来の夢は、
#1「風」
(2025年2月14日更新)
風が好きだ。
爽やかな風のなかで生きていたい。
時代の風に乗って物事をうまく運ばせたい。
風と仲良くやりたい。