
松本翔太郎のこんな風におもった
毎週金曜日更新
公式サイト書き下ろしの短い読み物
#松本翔太郎の風
#15「瞬」
(2025年5月23日更新)
深夜のスーパーは、冷えていた。
まばらな人影には多すぎるほどたくさんの商品が並び、照明は白く床を照らし、
普段の賑わいとは違う、どこか仮の世界にいるようだった。
お客として失格かもしれないが、
#14「袖」
(2025年5月16日更新)
日差しの感じが、もう夏に向かっている。
信号待ちをしているあいだ、感じる肌のあたたかさに、
ちょっと前までは『あったかいなぁ』なんて目を細めていたのに、
今じゃ『早く青になってくれ』と思っている。
とはいえ、
#13「白」
(2025年5月9日更新)
予定のない日というのは贅沢なものだ。
『あれをする』、『これをする』。正確には、『あれをしないと』、『これをしないと』。
日々そんな感じなので、ワクワクするような予定がある日というのは、そう多くない。
何も予定がないならそれだけでプラス。そんな風にすら思える。
#12「橙」
(2025年5月2日更新)
エスカレーターに100回乗ったとしたら、そのうち1回くらい、なんとなく思い出す。
ここでは本当は、誰も歩いちゃいけないらしい。
二列に並んで、立ち止まって運ばれていくのがルールだって。
だけど、ほとんどの人は右側を歩いたり、左側に立ったりしている。
今日の僕は100回に1回の日だったのだが、
#11「箱」
(2025年4月25日更新)
部屋のすみっこにダンボールがひとつ。
建物の構造の影響でできたちょっと窪んだスペースにぴたりと収まっている。
邪魔になるわけでもないしとりあえずこの場所に、と置いて、もうひと月は経つ。
中身は、手元に残しておこうと思った本や、
#10「辛」
(2025年4月18日更新)
辛いものはお好きだろうか。僕は好きではない。
食べられないことはないのだが、食事に刺激を求めていないため、優しい味付けのものを好む。
カレーライスも甘口でいいし、これは変人に片足を突っ込んでると思うが、
サラダに何もかけなくたって大丈夫。
そんな味覚に、このところ変化が起きている。
自分でも不思議なくらい、口が
#9「緑」
(2025年4月11日更新)
テントを買った。
手頃なサイズ感で、すぐに設置できるものを。
実は『マイテント』を持つのが長年のひそかな夢だった。
心躍る気分である。
先日近くの大きな公園を通った時に、
#8「縁」
(2025年4月4日更新)
先代の掛け時計が寿命を迎えてから、部屋に時計がない生活が続いている。
気に入ったものを見つけたら設置するつもりなのだが、なかなか出会えない。
今どき時間を確認するだけならスマホで十分と考えていたが、
#7「月」
(2025年3月28日更新)
おなじ映画が好き
おなじ食べものが嫌い
ちょっと距離が縮まる
服がおなじだった
それはちょっとはずいけど
#6「泉」
(2025年3月21日更新)
かつて参加したワークショップ。稽古場が公共施設だった。
体育館などで見かける『ウォータークーラー』と呼ばれる水飲み場があり、休憩の際に使ったところ、
その場にいた参加者の一人に「え? それ飲むんですか?」と笑われた。
たったいま口にした水のように冷たい笑いだった。
#5「砂」
(2025年3月14日更新)
潮風を感じるカフェに来てみた。
その店には飲み物だけでなくトーストなどの軽食もあり、小腹が空いた今の気分にぴったりだ。
お店に入る直前、テラス席が目についた。
丸いテーブルに、カラフルな椅子。店内は混み合っていたが、
#4「木」
(2025年3月7日更新)
会員登録フォームに生年月日の入力欄があり、タップするとカレンダーが表示された。
このタイプは初めてだ。
現在の月の横に表示された矢印を押すと、
#3「春」
(2025年2月28日更新)
逃げる月、二月。僕も逃げたい。
何を隠そう、実は春に苦手意識を持っているのである。
春になるとやたらと明るいキャンペーンが増える。
いつかの春、僕は大船にいた。
#2「夢」
(2025年2月21日更新)
子供の想像力はすごいとよく言う。
大人の想像力には限界があるというニュアンスを感じる。
自分にはこんなの思いつかない、と。
子供の想像力は確かに豊かだ。
僕の記憶の一番奥にある子供時代の将来の夢は、
#1「風」
(2025年2月14日更新)
風が好きだ。
爽やかな風のなかで生きていたい。
時代の風に乗って物事をうまく運ばせたい。
風と仲良くやりたい。